濡れた地面
日曜日の朝
故郷へ仕事に向かう電車内
「7:50の電車に間に合う」簡単なことにさえ汗だくにならないとできない
これが大人ってやつだったか
走り去る町中に遠く大きく見えた濡れた地面
水たまりになりそうでならない滲み方に歯痒さを思い出す
学生の頃、休日は毎日野球部の活動で過ぎていった
雨の日の朝は決まってその日の部活動が無くなることに期待した
到着したグラウンドが思ったほど濡れていないと、ガッカリしつつ今日1日の覚悟を決めたものだった
あの頃は部活動しかなかった
学校しかなかった
故郷しかなかった
狭い舞台で一生懸命に生きているなんて知りもしなかった
いつからか世の中には他の舞台や逃げ道がたくさんあることを知った
その頃にはもうずるい大人の仲間入りをして、自分のために生きられるようになった
あの頃の窮屈さを忘れて
今にでも窮屈さに押しつぶされてしまうあの頃の僕のような、今日の彼らの存在に思い及ぶことすらない
ただのずるい大人になってしまった
命を使うなら、今日の彼らのために使いたい
僕の意思に僕が気がつく
雨の日のグラウンド